2021.9.7
推し活に300万円以上つぎ込むも「私は中途半端なオタク」 ——おかずクラブ・オカリナさんインタビュー
人生の半分以上、沼にはまり続けて20年。アラフォー、独身、実家暮らしの漫画家・竹内佐千子さんが、決して輝かず、されど奇妙に充実した日常を綴ったコミックエッセイです。
自他共に認める漫画好きで、オタ活にのめりこんでいることでも知られるお笑い芸人のオカリナさんは、この作品をどのように読んだのでしょうか。
コミックスの感想や、ご自身のオタ活について語っていただきました。
(聞き手・構成/よみタイ編集部)
——オカリナさんはもともと漫画がお好きで、竹内さんの作品もよく読まれているそうですね。
はい。エッセイだけじゃなくてストーリーものも読んでいて、特に『2DK』シリーズ(編集部注:2013年~2019年刊行の作品。若手俳優をこよなく愛するおっかけ女子2人がルームシェアする話)が好きです。
——最新作『沼の中で不惑を迎えます。輝くな!アラフォーおっかけレズビアン!』は、アラフォーとなった竹内さんのコミックエッセイですが、お読みになって、いかがでしたか?
竹内さんて、すごいなって思いました。『ハニー&ハニー』(編集部注:2006年発売の竹内さんのデビュー作。レズビアンカップルの日常が描かれている)では、マサコさんと付き合っていた頃の様子をポップに可愛く描いていたのに、今回の作品ではご自身の外見の絵柄とかもずいぶん変わっているし、内面も赤裸々に描かれていて、20代から30代でこんなに変わるものなんだな、と(笑)。
——オカリナさんが、特に印象的だと感じられたのはどんなところでしょうか?
ずっと実家で同居されているのに、親に職業がバレていないというのは驚きました。漫画家さんならではなんですかね。他の職業だったら、職場に出かけたりするし、どんなことをしているのかという話にもなったりするじゃないですか。
あとは、竹内さんが結婚に対して良くも悪くも夢を抱いていないというのが、意外というか、印象的でした。私はゲイやレズビアンで恋愛している方というと、みなさん同性婚の制度化に熱心で、できるなら結婚したいのだろうと思っていたので。でも、レズビアンの方でも、パートナーと結婚したい人もいれば、竹内さんのように結婚には特に興味がない人もいるんですよね。考えてみれば当たり前なんですけど、レズビアンというだけでひと括りにしてしまっていたことに漫画を読んで気づいて、ハッとしました。
おっかけをしていると、心が体を追い越していく
——オタ活にのめりこんでいることで知られるオカリナさんですが、竹内さんとご自身が似ていると感じられたエピソードはありますか?
ストレスや傷ついた心を癒すためにガンガンおっかけ活動にのめり込んでしまって、結果として体を壊してしまうという話(編集部注:第5話「蘇らない、オタク」)がありましたが、あれはわかるなあと思いました。おっかけをしてる時って、やればやるほど元気になって、寝なくても平気なんですよね。
私はドラマ『おっさんずラブ』(編集部注:2018年からテレビ朝日系列で第1シリーズが放送されているドラマ)にどハマりしたんですけど、一番ハマっていた時は、寝る間も惜しんでひたすら『おっさんずラブ』のことしか考えてない状態だったけど、元気だったし、肌もツヤッツヤでした。
でもああいうのって、心が体を追い越している状態だから元気でいられるだけで、これから年齢を重ねると体がもたなくなってくるんだろうなと……。
私はまだ体を壊すまではいったことがないので、私のおっかけなんてまだまだだな、と思います。
——オカリナさんがこれまでで一番ハマった沼は『おっさんずラブ』ですか?
そうですね。もともとオタクで、『仮面ライダー』シリーズとか『戦国鍋TV』とかもハマってきたんですけど、『おっさんずラブ』が私の中のオタクの概念を変えたというか。寝る間もなくその作品の世界のことだけを考え続けて、グッズも全部欲しくなって、というほどハマったのは『おっさんずラブ』が初めてでした。
2018年の放送開始からリアルタイムで物語が進行していくので、この同じ時代の東京に春田と牧が(編集部注:『おっさんずラブ』のメイン登場人物二人)生きている!と、感情移入しやすいところがあったかもしれません。2019年には、ラグビーW杯とか台風の被害とか、世の中的に大きなニュースもたくさんあったのですが、この時期に春田と牧は別れてしまっているので、「こういうことも二人は共有しあえていないんだ」「春田のことが心配でも牧は連絡できなかったんだ」と思うと、泣けて泣けて仕方なかったです。今思うと当時の情緒は自分でもおかしかったと思いますね。
2019年の春には仕事の合間に、ドラマのロケ地に桜を見に行ったりもしました。『おっさんずラブ』は令和になることを知らない世界なので、はるたん(編集部注:主人公・春田の呼び名)が見た桜を平成最後に見ておかねばと思って。
——お忙しい中、聖地巡礼もされているんですね。『劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD』は73回ご覧になったとか。
私もそれまでは同じ映画を何度も観に行く人って意味がわかんないと思っていたんです。観てもせいぜい2回だろうと。でも『おっさんずラブ』の劇場版は当時そこら中で上映していて、行こうと思えばいつでも行けたこともあって、気がついたら73回行ってましたね。連れて行く友達の分のチケットも私が買ったりしてました。