2026.3.18
着信はイタリア。スケボー犬 コーダにまさかのオファー【サーフィン犬 コーダが教えてくれたこと 第7回<前編>】
犬と暮らす楽しさ。スポーツや遊びを通じて犬とわかり合う楽しさ――。
ドッグトレーナーになってからは、動物たち本来の性質に則ったQOL(生活の質)に配慮する「動物福祉」の考え方をもとに、飼い主と犬がより良い関係を築くためのサポートをする浅野さん。この、人間の都合だけによらない「動物福祉」の考え方が世界中で広まりつつある今、長く続いて来た“人と犬とのパートナーシップ”についてもまた、改めて考えてみたい。
前回のスケートボードのスピードを競うギネス挑戦から数年。コーダと浅野さんのもとに届いた、新たなチャレンジとは……?
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携帯画面に表示された国番号は“イタリア”
2023年の10月半ば頃のこと。犬仲間たちとキャンプに行った帰りにカフェでお茶をしていた時、私の携帯が鳴りました。着信画面に表示されていたのは、イタリアの国番号「+39」で始まる番号。イタリアに縁もゆかりもない私でしたが、友人も一緒にいたので“笑い話のネタ”くらいの気持ちでその電話に出てみました。すると聞こえてきたのは、「コンニチワ、ワタシはイタリアから電話シテイマス」と、たどたどしい日本語の男性の声でした。
「アナタにインスタグラムからメッセージ、沢山もシマシタ。世界記録に興味アリマスカ? アノー、ギネスワールドレコードに」(男性)
「?」(私)(海外から等の不信なDMやメールはすべて着信拒否にしていたため、メッセージは未確認でした)
「私は通訳シテイマス。アナタに電話スルタメニ。世界に挑戦シマスカ?ハァン?」(男性)
「ギネスとは、私たちが前に挑戦してダメだったやつのことですか?」(私)
「……ナニ?」(男性)
とっさに私は2019年にオファーを受けて挑戦したギネス(第5回参照)のことだと思ったのですが、どうも違う様子。お互いの話が全く噛み合わないため、「メールを見られるようにするので、まずは要件をメールしてほしい」とお願いしたところ、早速その日の夜、メールが来ました。

要件はざっと以下の通り。
1. ギネス世界記録への挑戦とその公式番組への出演依頼
2. 挑戦してほしいギネス世界記録の内容= 「スケートボードに乗った犬が通り抜ける、最も長い人間トンネル(Longest human tunnel travelled through by a skateboarding dog)」
要は、2017年に日本のテレビ番組「行列のできる相談所」でブルドッグのダイちゃんが「スケボーに乗って33人の足の間をくぐる」挑戦でギネス世界記録を達成した記録を破れるかということでした。また、挑戦する際はイタリアのカナーレ5というチャンネルで放送されている公式番組「Lo Show dei Record」でその模様を収録するということで、撮影は2024年の2月〜3月ごろ、イタリア・ミラノのスタジオで実施したい(イタリア滞在期間はリハーサル・本番含め4~5日間、渡航費と宿泊費は番組制作会社が支払う)とのこと。
なんと、ギネス世界記録挑戦のオファーが再び私たちのところにやってきたのです。しかも今度は“スピード”ではなくて“技”で。ギネス世界記録はもちろん挑戦ですが、今回は、コーダと一緒に海外へ行く事も大きな挑戦です。長時間飛行機に乗れるだけのクレート(移動用に犬を入れるケージ)トレーニング、どこに行っても平常心でいられるための社会化トレーニング、そしてスケートボーディングの技術…と、これまでコーダと長年取り組んできたトレーニングのすべてが試される、まるで運命が私たちを試しているかのような依頼でした。
誰か、”股”貸してください!
まさかのギネス再挑戦、そしてこれまでの私たちのすべてが試されるようなハードルの高さにも奮い立ち、これに挑戦しない理由はない!ということで、早速コーダと練習を始めることにしました。…が、人間を33人以上集めての「股をくぐる」練習って、なかなかできることじゃないんですね。そこで募集をしてみようと思ったのですが、いきなり街中で「すみませーん!股貸してください〜!」なんて声をかけたりしたら、変人扱いされそうで無理無理…と勇気が出ません。街やショッピングモールにはこんなにたくさんの人がいるのに…ともどかしい思いでした。
そこでとりあえず、ドッグスクールにあるイスを人間の足に見立て、50㎝ぐらいの等間隔に空けて置いて「股をくぐる」風のトレーニングから始めました。時々イスの代わりにオモチャを置いたり、左右のイスの間隔を狭くしたり、イスをビニールシートで覆って暗くしてみるなど、環境に変化をつけることでより精度を高めることも目指しました。

この練習を始めて3日目、たまたま打ち合わせで行ったムラサキパーク笠間でスタッフの方に場内放送で呼びかけをしていただき、なんと30人ものスケーターたちが「股くぐり」要員として集まってくれました。練習の成果を早速発揮するチャンスです。
「コーダ、アップ!」の合図とともに、ずらりと並んだ30人の大人と子供スケーターの股の間をくぐることに挑戦したコーダでしたが、15人目の小学生の子の足に当たって止まってしまいました。「あぁ!」とみんなも残念がってくれたのですが、あまり拘束しても申し訳ないので、この日は2回で練習終了。「30人もの股をスケートボードでくぐることはそう簡単じゃない」ということがわかりました。
次は、海つながりの友達で、ハワイアンミュージックチームの6人の股を通過、サーファー8人の股を通過。コーダに「人間の足の間をスケートボードでくぐればいいのだ」とわかってもらうために、頼めそうな集団がいたらとにかく積極的にお願いしていきました。その中で、コーダの前髪が目にかかっていると足にぶつかりやすく、視界も重要だということもだんだんわかってきました。
この時コーダは11歳。撮影でもイベントのパフォーマンスでも、私があれこれ指示を出さなくても即興でこなすことができていたので、ここまで集中してトレーニングをするのは本当に久しぶりでしたが、当のコーダは、ご褒美のオヤツが食べたいからやっているわけではもはやなく、「成功したこと」に喜びを感じ、そのこと自体がモチベーションになっているようでした。スケートボードというアクティビティを通じて、コーダの「ほしいもの」が、「ご褒美(トリーツ)」から「正解」へと変わっていたのです。今のコーダなら、このまま反復練習を続けていけば、35人でも40人でも通過できるだろう、ひとまずギネスに挑戦するだけのスキルは、これでヨシ!となりました。
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