2020.10.13
「なるほどですね」は敬語ではありません〜聞くたびにモヤっとする今どきビジネス言語5選
企画書的なものはありますでしょうか?
「はい、企画書的なものはありませんが、企画書はございます」
と大人気ない返答をしたくなる(くどいようですが、しませんよ)のがこちら。
「〜〜〜的なもの」である。
これは多分、遠慮とか頼みづらさ、といった思いが生み出した表現であろう。
今まで話を聞いてだいたい内容はわかったけどそれを書面にしてほしいな、でもわざわざ作ってもらうのも悪いかな、でも上司にも見せたいし、やっぱり作って送ってほしいな……からの「企画書的なもの」発言ではなかろうか。ちなみにこの表現はメール文面内にも散見されます。
類語としては「報告書的なもの」「見積もり的なもの」「媒体資料的なもの」など。
まあ、なんというか書類的なものについつけてしまいたくなるのですね。

〜〜〜していただくことは可能でしょうか?
「ガッテン! お安い御用だぜ!」
と迂闊には答えません。
これもやはり、遠慮の気持ちから始まり、しかも頼みたいことが明らかにちょっと相手に負担だったり、迷惑かもしれない……という自覚のある時にしてしまう表現だと推察。
まったく悪気もないし、むしろ良心の呵責に近いところから発せられる言葉なのだけど、それがクセになってしまって、およそすべての頼み事の文末に「いただくことは可能でしょうか?」をつけている人も見受けられる。
「それでは当日は御社までお伺いさせていただくことは可能でしょうか?」
だって、打合せは弊社でお願いいたします、とこちらから頼んだのだから……それともアレですか、うちの会社に来るまでには何かすごいトラップとか通行手形とかパスワードとか必要なのでしょうか?
言ってしまえば……
「いったいお前はこれから何を言ってしまうんだ!」
と喉元まで出掛かるセリフをぐっと嚥下する。
このフレーズは本当によく耳にするようになりました。
「言ってしまえば、ちょっと面倒なことになるかもしれなくて」
「言ってしまえば、著者がやっぱり2ページ増やしたいそうで」
「言ってしまえば、そろそろ動いたほうがいいかな、と」
「言ってしまえば、利益がすごく出てまして」
「言ってしまえば、もうかなりお腹いっぱいで」
「言ってしまえば」の後は何を言ったってヘッチャラです。何でもありです。
20年以上前に語尾に「みたいな」をつけるのが世間を席巻したことを思い出しました。
「あー、そこで彼女とツーショットになっちゃった、みたいな」
という大変カジュアルな使われ方から
「そこではちょっと契約の方が難しい、みたいな」
とだんだんビジネスシーンにも侵食し、令和の今も普通に使われていますが、その頻度たるや当時はすごいものがありました。これもまた、何を言ったあとにくっつけてもOKですから。
「言ってしまえば」に関しては……何ですかね。すごく言いにくいことを言うためのオブラート加工、というよりは、もはや枕詞くらいのものなんでしょうか。
あおによし、たらちねの、やくもたつ、言ってしまえば、ということですね。
了解です!
「いや、無線じゃないんだから」
である。
もともと、「了解」は無線なんかで通信内容を受け取ったことを表明する際に「了解っ!」と使われていたそうです。言葉としては、伝えられたことを理解したぞ、もっと簡単にいうと「わかった!」ってな意味合いですね。そんでもって本来そのあとに続くのは「します」「しました」であって「です」ではない。
さらに言うと(いや、言ってしまえば、か)「了解しました」=「わかりました」に近いため、実は目上の人に対してやビジネスシーンでの使用にはあまり相応しくないのです。
そうした場で使うべきなのは、「承知しました」。「承知いたしました」とさらに丁寧に言う方もいらっしゃいますが、「承知しました」でもじゅうぶん敬語になっているから大丈夫。
電話で話していて「はい、その旨承知しました」なんて返答されますと、とても耳触りがいいものです。いや〜日本語っていいですね、難しいけど。
でもまあ、「了解ですっ!」と強く理解表明されて伝わってくる熱意ももちろんあるので、実は私自身はそんなにはイラモヤしないけれど、「オッケーっス!」に近いものではあるので、話すお相手によってはご注意を。
以上、昨今気になる「今どきビジネス言語5選」でした。
でも、最近は「ら抜き言葉」「助詞抜き言葉(彼からいきなり好き言われて、のような)」なども現代を象徴する表現とみなして、あえて原稿を修正しないことも多々あります。言葉は生き物、時代とともに生まれ、残るものは残り、廃れたものは後に死語と笑い飛ばされる……
言ってしまえば、こちら現代用語の観察書的なものとしてお読みいただくことは可能でしょうか?
それならば了解です! うーん、なるほどですね〜!
……やっぱり言葉は難しいw
