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[編集部ブログ]ひとみしり編集者のEMANON DAYS

第1回「もしもあなたが編集者をめざしているなら」

こんにちは。ノンフィクション編集部の志沢直子と申します。

TwitterやFacebookからここに来てくださった方は、もしかしたらずいぶんと前から知り合っているかもしれません。これまでもSNSや所属する編集部のサイトまわりにウロチョロしていたのですけれど、この6月にこのノンフィクション編集部が新たに立ち上がり、こうしてウェブメディア『よみタイ』も立ち上がり、そこのWebプロデューサーを名乗るからには、一念発起してきちんとした形で発信していこうじゃないか! と決意したしだいなのです。

ここで発信する内容は、編集者の戯れ言、いえいえ、私も編集者となって早、四半世紀。この仕事に就いたおかげでたくさんの知識、経験、人脈、珍事……本当にさまざまなものを体験したり得ることができました。ここではそこからピックアップしたあれこれをお届けしていきます。
どうぞご贔屓に!

才能ある人をサポートすることの喜び

……で、連載タイトルにある「EMANON DAYS」。

EMANONはNO NAME、つまり〝名無し″という意味の単語を反対から並べたもの、とされています。欧米の言葉遊びから生まれたなどともいわれていますが、多分スラングというか造語というか、そんなものですね。

私がこの言葉を初めて知ったのはサザンオールスターズの『綺麗』というアルバムに収録されていた「EMANON」というナンバーからでした。
当時はその語源など知る由もなく、女の人の名前なのかなー、とトンチンカンな認識でいましたが、とにかくこの曲が大好きだった。いえ、今でも死ぬほど大好きなんですが、ひと夏の恋の終わりをさらりと歌ったオシャレすぎる曲にすっかり心奪われた高校生の自分…どうして桑田佳祐は好きな女性のことを〝可愛い花のよな″といってくれるんだろう、とうっとり…いや、そこじゃなくて、その後〝EMANON″の本当の意味を社会人になってだいぶたってから知るにいたり、ますますこの言葉が好きになったのです。

EMANON…NO NAME。
だってそれは編集者の座右の銘にも値する言葉だから。

ときに、編集者、エディターという職業にどんなイメージを持っていますか?
かつてトレンディドラマで人気女優が演じる編集者は、いつも大きなブランドバッグを肩にかけ、朝から晩まで大忙し、でも髪もメイクも乱れることなくピンヒールで街を闊歩し、せっせと恋もしてたんですけど……ま、そこまでの素敵なイメージは持ってないですよね。
でも、なんとなくカッコいい、とか、憧れます、と言われることは多いです、畏れ多くも。

ですが、私たち編集者の多くは己のことを〝黒子″〝裏方″〝縁の下の力持ち″というようにとらえているんじゃないかな。そう、NO NAME、名無しの権兵衛。
編集者とひと言でいっても、雑誌、書籍、マンガ、グラビア、ウェブ……担当するメディアやコンテンツが違えば結構仕事内容は違うものだし、会社が違えばまたそこで何かと違うものなんですが、基本的にその根底にあるスピリットは「才能ある人のサポート」ではないかと私は思っています。

作家が作品を書くときに必要な資料を探しまくって、それを使いやすい形にして届ける。
カメラマンがいい写真を撮れそうなロケーションを探す。
ヘアメイクのインスパイアになるような新製品情報を伝える。
グラフィックデザイナーがレイアウトを作りやすいよう、わかりやすいコンテを作る。
クライアントに納得してもらえるようなプランを構築する。

……といった実務ももちろんなんですが、現場スタッフが喜んでくれるようなおいしいロケ弁、気の利いた手土産、居心地のいい美味なレストラン情報をストックしていることや、時事ネタや新刊情報、ネットの雑談といった些末なことをとりまとめておくことも大事なことだったり。

そして、こういった作業のいずれもが、特別な資格や技術がいるわけではないけれど、誰もが出来るか、というとやはりちょっと違うのかな、と思います。

骨身を惜しまないことが喜びへとつながる

以前仕事でご一緒した有名なネイリストの方がおっしゃっていました。
「いいネイリストになれる子はね、〝私、ネイルもアートも大好き、こんなに上手にできるんです″という子じゃないの。他人をキレイにしてあげることに大きな喜びを感じられる子なの」

くーっ。いい言葉です。
その方のサロンは毎春数百人の応募者がきて数十人採用するも、ゴールデンウィーク明けには半分以下になってしまうのだそうです。

だってネイリストってものすごく大変で地味な仕事。
お客さまと至近距離で、少なくとも1~2時間はマンツーマンで向き合う作業。施術だけでなく、会話、サービス、閉店後のメンテに勉強……本当に努力と気遣いが必要な仕事です。

「技術なんかは勉強と練習でいくらでも伸びるからね」ともおっしゃっていました。
もちろん持って生まれたセンスとか、同じネイルアートでも1週間で出来るようになる人と1ヶ月かかる人もいるとかあるけれど、「このかたのネイルをすっごくキレイに仕上げて喜ぶ顔が見たい!」というマインドが薄い人はのびしろも想像できるというもの。思った以上に裏方チックな業務に嫌気がさすのも早いのかもしれません。

編集者の仕事もちょっと似てます。なので、
「編集者になりたいんですが、必要なのはどんなことですか?」
と聞かれたら、私は必ず
「表舞台に立つ人のために骨身を惜しまず尽くせること」
と答えています。

たくさん本を読んでいるとか、文章を書くのが好きとか、雑誌や漫画が死ぬほど好き、とかも、とても大切で有利な資質です。
でも、ただ文章を書くことだけが好きなら、作家やコラムニストをめざしたほうがいいし、本をたくさん読むことを仕事のメインにしたいなら書評家をめざしたほうがいいのかもしれません。

だって、EMANONだから、編集者。

そんな裏方三昧で楽しいのかって?
やりがいあるのかって?

ものすごくありますよ!!!
楽しいですよ!!!

考えてもみてください。

自分が担当した作家の作品がベストセラーになる。
自分がコンテを作った雑誌のページが読者アンケートで1位になる。
自分が関わった広告プロジェクトの製品がバカ売れする。

……己にはベストセラー小説を書く文才も、大ヒットマンガを描く才能も、ヒット製品を開発する能力もないのに、そういったものが世に出る喜びの一部を味わえてしまう……なんて、So Happy♪

ここまでめざましい結果が出なくたっていいんです。

新刊の装丁がすごく素敵にできた。
すんごくおもしろい記事が出来た。
めっちゃかわいいメイクに出会えた。

そんな喜びはしょっちゅうだし、私は書籍編集になってまだ3年ですが、担当した本が仕上がるたびに、「う~ん、なんていい本なんだろう」と胸の中でのガッツポーズをおさえられません。

そういうとこ以外でも、

珍しい差し入れを持参して相手の喜び驚く顔を見ては胸の中でガッツ!
書店さまが作ってくださったナイスな店頭POPを発見してガッツ!
もっと言うなら、部下のあげてくれた原稿が素晴らしすぎてガッツ!

んもー、胸の中でガッツポーズしすぎて、こぶしがDA PUMPなみに揺れてるEMANON DAYS、大忙し。カモン、ベイビ~♪

もちろんいいことばかりじゃないけれど、がっくり落ちて途方に暮れることもあるけれど、毎日不規則な生活だし、目の下クマ子になるし……そんな悲喜こもごもの「編集者のEMANON DAYS」をこれからもどうぞよろしくお願いいたします。
(タイトルにある「ひとみしり」に関してはまた日を改めまして!)

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志沢直子

しざわ・なおこ●集英社のノンフィクション編集長。東京都出身。新卒で集英社に入社後、メンズノンノ、LEE、MORE、MAQUIAなど女性誌編集とデジタル編集の経験を経て、2018年6月よりノンフィクション書籍・ウェブプロデュースを担当。フェイバリットは、ノンフィクション、ミステリ、マンガ、デジタル、美容、ゴルフ&ラン
Twitter→https://twitter.com/naokoshizawa

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