よみタイ

[編集部ブログ]ひとみしり編集者のEMANON DAYS

第2回「編集者たちが表舞台で発信する理由」

こんにちは。ノンフィクション編集部の志沢です。
今回は前回のちょっと続き的なことをお話します。

SNSと出版メディアの共存関係

連載第1回目を書き終えて読み返したときに思ったんです。こんなブログなんてえらそうに書いて、ちっともEMANONじゃねえじゃん、て(笑)。矛盾してますよね、だからもう少し、書きます、編集者のこと、出版まわりの今のあれこれ。

ウェブ、デジタル、SNS…とにかくそういったものの圧倒的な普及で、マスコミまわりの様相は大きく変わりました。特に雑誌や書籍といった出版関連は、2014年を境とするInstagramの台頭に大きな影響を受けたんです。

例えば、インスタでものすごいフォロワー数を持つ水原希子さんやローラさん。彼女たちのインスタの魅力は多々あれど、やっぱりなんといってもいちばんは、その私生活がかいま見られることでしょう。髪型を変えたり、新しい服やバッグを買ったり、毎日の着こなしとか食べてるものとか、そういったプライベートな一面をインスタをフォローしているだけで見ることができてしまう…。
でも実はこういった情報って、かつては雑誌のお家芸だったんです。人気のある女優さんやモデルさんがシーズンの立ち上がりに自分で買った洋服とかを見せてもらったり、バッグの中身を誌面で公開してもらうようなテーマ。こういうページが雑誌の巻頭をドーンと飾ってた。そして、とっても当たってた。

でも今はもうほとんど見られない特集ですね。だってスターのみなさん、こぞってブログやインスタ、Twitterをやっていて、とっととそこでアップしちゃいます…スピード感がまるで違う。今日買った靴やバッグを今日SNSにあげることができて、見る方も今日見られる。

ですが、雑誌のペースでいうならば、月刊誌ならだいたい発売日の1カ月ぐらい前には記事を作り終えなくてはなりません。つまり雑誌に掲載される情報はすでに1ヶ月くらいは前のもの、ということになるわけです。
もうこの圧倒的なスピード感の違いは、なんかもう、ギャフンなわけです。

もちろん雑誌の特集記事は、雑誌ならではのきめ細やかな取材であるとか、凝った撮影であるとか、素晴らしさもたくさんありますし、化粧品の新製品ニュースやファッションの新作アイテムなどは、その発売のずいぶんまえにソースを取材して掲載しているので、決して全てが古い情報というわけではありません。でも、こうしたSNSの普及によって、ルポなどの特集作りが難しくなってきてしまったのは事実でしょう。

そしてもうひとつSNSの大きな影響があって、コンテンツや意見をどんどん発信する機会や場所を、誰もがたやすく得ることができるようになったということです。
匿名性が圧倒的に高いTwitter、ある程度プロフィールやキャラクターを出しているブログ、創作発表の場でもあるpixivやなろう系サイト…その人に何の肩書きもステータスもなくても、自分の意見や創作物などを、人の手を借りず費用をかけず、どんどん世に送りだせるようになったわけです。最近ではnoteを活用する人も多いですね。

こうした今の状況がいいのかとか悪いのかとかの結論はおいといて(結論を出す必要もないか)、編集者の仕事そのものもSNSにはかなり影響をうけました。
それまでの黒子一直線から、ある日突然「編集部でブログを始めるから交代でみんなで書くように」「編集部で公式Twitterのアカウントとるので“中の人”やるように」「撮影現場でモデルちゃんと一緒に写真撮ってコメントもらってインスタにあげるように」…今までの仕事にはまるでなかったことが突然出現したうえに、あまりにそれまでの作業と毛色が違うことに、かなり戸惑いました。

実際、私自身も2010年から公式Twitterを始めていますが、最初はほんとに何をあげていいかわからなかった…こんなただのイチ編集者がつぶやくことにいったいどこの誰が興味を持つんだよ、こんなの雑誌の宣伝になんのかよ、って心中毒吐いてシブシブやってたもんです。とにかくいきなり自分たちでもいろいろ発信しろという状況になって、大変に戸惑ったわけです。ネイティブデジタル世代の人には理解しがたいかもしれませんが、ホントなんですよ。

正直、この子たちがいればいつでもどこでも
正直、この子たちがいればいつでもどこでも

有史以来、人類は今いちばん「読んで」いる…!

でも、いまは顔も名前もバーンと出してどんどん発信したりプロデュースする、スター編集者みたいな人がたくさん出てきましたよね。コルクの佐渡島庸平さんとか箕輪編集室の箕輪厚介さんとか。ああいった人たちを見ていると、自分とはひと世代、いえいえ2世代ぐらい違う編集者の人たちが出てきたなあ、としみじみ思います。とてもじゃないけど同じようなまねはできないけれど、学ぶことはたくさんあって、実際参考にさせてもらっていることが多々ありです。

こうした彼らの表舞台の活動だけに憧れたり、編集者のくせにしゃしゃり出やがって、みたいな批判的な声もあるようですが、それは大きな間違い。
なぜなら、彼らの裏方での尽力や勉強、努力は半端なく、彼らをよく知る人たちは口を揃えて、その縁の下の力持ちぶりを高く評価しています。そして何より、自分が手掛けて世に送り出した作品への愛と喜び、コンテンツへの思い入れの深さは、その発信のあちこちに感じられます。そこは旧世代編集者といっしょかな(笑)。

そんなメディア変革期のさなかに、このノンフィクション編集部は立ち上がったのですが、組織のプランニング時に、絶対欠かせないものとしてあがったのが、メディアとしての機能を持つウェブサイトの存在でした。
人気作家やコラムニストが書いてくだされば、売れる本はできるでしょう。でもいつもいつもヒットメーカーのような方に書いていただくのは不可能です。だからこそ、新しい書き手との出会い、発掘は絶対に必要なこと。まだ1冊の本にして刊行するには厳しいけれどなんだか気になる、もっと知りたい…そんな人たちがコンテンツをライトに発表できるような機会と場所を作りたかった、そう、ブログやTwitterにあげる感覚で。

最近では、Twitterであっという間に数万単位でバズる一コマ漫画とか、あちこちに素晴らしいコンテンツの芽が生まれていて、正直とても追いつけない。追いつけないけど、そういものを見るのは本当に楽しい。
TLのなかでさらっと流れてきてくすっと笑ったり、ジーンとしたり。ああもう、できればどんどん本にしていきたい。デジタルが先でも紙が先でも、そんなのどっちでもよくて、読者が読みやすい形で届けたい…
「よみタイ」のオリジンはここです。

今は、たくさんのウェブメディアやニュースサイトやまとめサイトがあって、1日に何十本もの記事が配信されますよね。「よみタイ」は今のところ最低でも1日1本、新作の読み物が更新アップされる、というコンセプトでやっています。
たった1本かよ? と思うでしょう。でもこの1本は、どこかの記事の抜粋でも引用でもなく、著者が1文字1文字、1描き1描き、心血を注いでくださった原稿です。いちばん最初にここでしか読めない原稿です。そしてきっと、いずれ電子や紙の本に生まれ変わって、また違った形で世の中に出ていくはずです。

うちの副編集長が「よみタイ」のコンセプト文におもしろいことを書いてくれました。「とんでもないスピードで進化するウェブやSNSの影響で、人はいま有史以来いちばん文字を「読んで」います。そんな無限の文字情報にふれるいまだからこそ…」。
うーん、目から鱗でした。別にスマホでウェブサイトを見ていなくても、メールやLINEをやったり、動画を見るのもゲームをするのも、そこにたどり着くまでに絶対文字を読まなくてはいけない。みんな、すごく「読んで」いる。読むことが実はそんなに苦じゃない。

そんな人たちに向けてコンテンツを発信していく私たち編集者も進化していかなくてどうする!
…と、思わず書いていて鼻息が荒くなってしまいましたが、こういったことをみなで考えている流れのなかで、編集部発信もやっていこう、ということにたどり着いたのです。

そしてまだまだアナログじゃないとできない作業もあるのでした
そしてまだまだアナログじゃないとできない作業もあるのでした

ちょっと真面目な話が2回続きましたが。志沢の担当する「EMANON DAYS」では読んだ人にちょっとでも笑ってもらえたり、ふーんそうなんだと思ってもらえたらいいな、くらいのつもりで書いています。
へ〜編集ってそんなこともしてるんだとか、この本の制作舞台裏にはそんなことがあったんだとか、食とか美容とか健康とか。ちょっと一息いれてもらえたらありがたいことです。
それではまた!

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志沢直子

しざわ・なおこ●集英社のノンフィクション編集長。東京都出身。新卒で集英社に入社後、メンズノンノ、LEE、MORE、MAQUIAなど女性誌編集とデジタル編集の経験を経て、2018年6月よりノンフィクション書籍・ウェブプロデュースを担当。フェイバリットは、ノンフィクション、ミステリ、マンガ、デジタル、美容、ゴルフ&ラン
Twitter→https://twitter.com/naokoshizawa

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