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[編集部ブログ]ひとみしり編集者のEMANON DAYS

編集者なら、易々と使っちゃいけねえ言葉がある

この仕事していて、己れに禁じ手にしている言葉がいくつかあります。

「私はこっちが好き」
「私はこれ、キライ」

センスがいいって、とどのつまりはどんなこと?

レストランのオーダーじゃないですよ。
例えば、掲載する写真をどれにするかスタッフと選んでいる時。
本や特集のタイトルを決める時。

「私はこっちの写真が好き!」
「このタイトルはあんま好みじゃないなあ」

とか、言わない。絶対。

それは自分が若い時、今より全然キャリアも経験もない時に、まわりのこうした表現に苦労して悩んだから。
まー、そのころは血気盛んなお年頃でもあったので、この写真あんまり好きじゃなーいとか言われると
(ケッ、おめーのために写真撮ってきてんじゃねーよ)とか内心で毒づいてたもんですが。

ここは、あくまで表現の問題でして。

当時、「これキライ」「これは好き」でジャッジ表現していた先輩やスタッフたちの判断そのものが間違っていたわけでは決してないのです。いやむしろすんごく合ってました、そのジャッジ。いろいろ勉強させていただきました。
先輩たちは経験もキャリアも豊富で、感性も磨かれています。センス抜群のスタイリストさんやカメラマンたちと、好き・キライという表現のやりとりで深く理解しあえてた。

だけど、自分、その頃所属していたLEEという女性誌の世界観や読者像をつかめずにいました。

おしゃれでセンスあふれる暮らしをていねいに楽しむ女性たち…
元ヤンでバブル世代で夜遊びとマンガをこよなく楽しむガサツなシザワナオコ…

そもそも女以外の共通点がない。

論理的にジャッジされることで伝わりやすくなること

かれこれ15年くらい前の話なので、現状はどうなのかはまったく不明ですが、当時、毎月の特集テーマは編集会議で話し合って決めていました。
で、ある月の会議で、この世にはおしゃれなゴミ箱というものが存在しない! という嘆きから延々とゴミ箱談義に。

スタイリストの●●さんのお宅ではこんなのだった、料理研究家の●●先生のおうちではこうしてた、ちなみにウチではこういうのだ…で1時間以上は余裕で続くゴミ箱への嘆きとこだわり。
まるで毛の話(女が3人寄れば…毛のハナシ。現代体毛事情)と一緒だ。違うか。

それをぼんやりと聞きながら(うちの実家のゴミ箱はどんなだったか…確か何かの景品でもらった水玉の筒型のヤツじゃなかったっけか…今それ言ったら殺されるな)とか思っていたわけです。
後にも先にも人生であの時ほどゴミ箱について考えたことはなかった。

そういえば、あったか下着というテーマを揉んでて、ユニクロのヒートテックみたいな安価で優秀なインナーとかなかった時代だったので、ダマールはたっかいけどやはりあったかい、とか、透けないのはこんなベージュのだ、とかこれまた侃侃諤諤してる最中で意見を求められ、「いやーこんな股引みたいなの穿いてたら彼氏にドン引きされますよー」といって周りをドン引きさせてた20代の私…すみません、すみません、本当に役立たずのクズでした。

これ、MB(「新潟出身の服バカが年商1億以上を稼ぐまで~ 小学生でもわかるMBのビジネス成功論」)さんが、おしゃれに必要なのはセンスではなくロジック、とおっしゃっているのとも通じるものがありまして、暮らしのおしゃれのセンスやこだわりがほとんどなかった自分には、好き・キライというジャッジ表現だけでは、どこが重要ポイントなのかよくわかんなかったんですね。

我が家のゴミ箱。水玉模様とか選ばないです。これもLEEで鍛えていただいたおかげです
我が家のゴミ箱。水玉模様とか選ばないです。これもLEEで鍛えていただいたおかげです

なので、こうしたアンポンタンにLEEの世界を伝えるのであれば「これは好き」「これはキライ」ではなく、

「この家の壁紙は○○素材で住んでいる人はこういうライフスタイルだから、ここに置くソファーはイデーのシンプルなのがしっくりくるのだ」
とか、
「このお料理は色合いがレッド系で強いから、食器はそこになじむよう、くすんだ色のトーンにしてテーブルクロスもその同系色にするのがシックでいいわけ」
とか、いや、ここまで丁寧に教えてくれなくてもいいんですが、例えば2枚の写真のうちどちらかを選ぶとなったときに、

「こっちの方がインパクトがあって読者にとって印象的」
とか
「こっちの写真のほうが角度としてこの商品がきれいに見えるし、全体像を伝えやすい」
とか、そういう風に言ってくれるとぐっとわかりやすい。

そんでもってこんな風にロジカルにジャッジされると、たとえ己れの希望とは違うものをチョイスされても不思議と我を張る気持ちにならない。

(ほほー、こういう写真が強いのか)
(確かにこっちからじゃないとこのバッグのポケットは見えんしな)
と、すっと納得できる。

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志沢直子

しざわ・なおこ●集英社のノンフィクション編集長。東京都出身。新卒で集英社に入社後、メンズノンノ、LEE、MORE、MAQUIAなど女性誌編集とデジタル編集の経験を経て、2018年6月よりノンフィクション書籍・ウェブプロデュースを担当。フェイバリットは、ノンフィクション、ミステリ、マンガ、デジタル、美容、ゴルフ&ラン
Twitter→https://twitter.com/naokoshizawa

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